製造業におけるAIの利用シーン、導入事例を紹介!

 2021.11.02  HOYAデジタルソリューションズ株式会社

さまざまな業界で導入が進んでいるAIですが、製造業においてはどのように活用されているのでしょうか。本記事では、製造業におけるAIの導入状況や利用シーン、実際の導入事例などについてご紹介します。自社へのAIの導入を検討されている方は、ぜひ参考にしてください。

製造業におけるAIの利用シーン、導入事例を紹介!

製造業のAI導入状況

日本経済研究センターの発表によると、国内企業におけるAI/マシンラーニングの導入状況は14.1%、製造業に限れば11.2%にとどまるとのことです。実際にAIを導入している製造業の多くは、検査・検品・在庫管理などさまざまな業務で活用していますが、全体で見るとその比率は非常に低いことがわかります。

そもそもの話をすると、国内でAIを導入している企業自体が多くありません。日本と諸外国とで比較すると、日本の産業におけるAI導入状況は、先進国の中で最も低いというデータがあります。なぜ、これほどにも国内でAIの普及が進まないのでしょうか。

AIの導入が遅れている理由

まず、AIを利用しようと思う意識が全体的に低いため、導入が積極的に進んでいないことが挙げられます。特に、熟練の技術に頼る部分の多い製造業では、AIとともに働くことに抵抗を示す人が多く、こうした傾向が顕著です。

また、日本は他国と比べてAIの技術力に乏しく、AI分野の研究があまり活発でないことも影響しています。論文数は言うに及ばず、AI関連の特許出願件数で比較しても、米国と中国に圧倒的な後れを取っています。ほかにもAI関連の人材や企業数など、比較できる点は多々ありますが、いずれにおいても日本はAI導入に消極的で遅れていると言わざるを得ません。

しかし、AI技術は上手く扱いさえすれば、事業の効率化を進められる強力なツールになります。導入例が少ないということは、AIをどの企業よりも早く取り入れることで、国内でも抜きん出た企業になれる可能性があるともいえるでしょう。

製造業 × AIの主な利用シーン

ここでは、製造業におけるAIの主な利用シーンをご紹介します。

異常検知

製造現場では、異物混入や不良品が発生しないよう、入念な確認が行われます。従来のやり方では人の手で検品を行い、異物や不良品を仕分けしていましたが、これではとても時間がかかるうえにヒューマンエラーの可能性が残るデメリットもありました。

こうした異常検知の業務には、AIカメラの導入が有効です。AIカメラが人の目に代わって製品の状態を細かく検査し、不良品や異物を見分けます。人間が作業する場合、疲労や個々人の技術によって検査の質にばらつきが生じ、品質にも影響することがありますが、AIカメラならその心配がありません。常に一定の基準で検査を行うため、品質の安定と作業効率の向上が実現します。スタッフ一人ひとりにかかる負担が軽減し、必要な人員も削減できます。

また、AIカメラは危険感知およびアラート機能を備えているため、事故防止にもつながります。製造現場ではプレス機やフォークリフトなどの大型重機や、扱いに注意が必要なものなどを使って作業することがあり、ちょっとした不注意が大きな事故のもとになります。AIカメラを設置し、常時モニタリング状態にしておけば、事故が発生するリスクを抑え、より安全な製造現場を作っていくことが可能です。

画像認識

「画像認識」とは、簡単にいえば画像データから学習した一定のパターンを検出し、顔や文字など特定のものを認識する仕組みです。身近な例を挙げると、スマートフォンに搭載されたカメラアプリの顔認識機能が該当します。製造業でも、この画像認識を活用したカメラの導入が進んでおり、業務の効率化に貢献しています。

AIの画像認識が活躍する業務はさまざまですが、検品作業に導入すると、作業の高速化や精度向上が期待できます。従来は人間の目視による検品が主流でしたが、人間が作業する以上、漏れやミスの可能性はどうしても排せませんでした。その点AIなら、人間よりも高精度な検査ができ、作業スピードも高速です。これにより、作業時間の短縮やエラー件数の減少、人件費の削減などにつながります。

ほかの活用例としては、画像認識で作業員の行動動線を監視し、侵入禁止エリアや危険エリアへ人が入ろうとしたときにアラートで知らせて防止する、といった使い方もできます。画像認識技術はコスト削減だけでなく、現場で働く人の安全確保にも役立ちます。

在庫管理

在庫管理業務にAIを導入することで、正確な需要予測や在庫量の最適化が可能です。

従来の在庫管理では、従業員の経験や知識、各店舗の売れ行きなどから発注量や生産数を決めることが一般的でした。しかし、欠品を避けるために、どうしても余裕を持って予測よりも多く製品を生産する必要がありました。その結果、固定費用や過剰な在庫の増大、廃棄によるロスなどが発生し、ムダなコストが増えるという問題がしばしば起きていたのです。

この問題を解消し、適切な在庫管理を行うには、AIによるデータ分析が役立ちます。具体的には、過去の売上や顧客・需要の変化など、過去数年分のデータをAIに分析させ、その分析をもとに予測を立てて、各オペレーションを実行します。これにより正確な需要予測が可能となり、生産数や生産タイミングが最適化され、在庫ロスの削減につながります。

膨大なデータの処理はAIの得意分野でもあるため、多くのデータ分析が要求される在庫管理は、AIの効果を最大限に発揮できる業務といえるでしょう。

製造業におけるAIの導入事例

最後に、AIを導入した企業の実例をご紹介します。自社の状況と照らし合わせながら、AI導入の参考にしてください。

アウディ社:品質検査の自動化

ドイツの大手自動車メーカー「アウディ」では、自動車部品の品質管理業務にAIを活用しています。プレス工場で製造する部品にひび割れがないかを検査するため、AIによる画像認識チェックを導入しました。

同社は従来、人間の目視によって部品の検査を行っていましたが、人手はもちろん手間も時間もかかっていました。また、画像認識ソフトウェアによる検査も採用されていましたが、ソフトウェアが誤判定を起こすという問題が発生したため、効率的な作業とは言い難い状況だったのです。

そこで同社は、この問題を解消するため、ひび割れを画像認識技術で自動検知するシステムを構築しました。膨大なひび割れ部品のサンプル画像を用意してAIに学習させた結果、AIがひび割れを正確に検知するようになり、手間の大きかった検査が数秒で終わるようになったのです。AIによる検知システムが成功したため、同社はほかの工場でも導入することを検討しており、製造コストのさらなる削減が見込まれています。

ダイキン工業:熟練者の技術をデジタル化

大手総合空調メーカー「ダイキン」では、熟練の技術者が持つ高度なスキルをデジタル化するシステムを開発しました。日立製作所と協力して、熟練技術者の動作をデータとしてまとめ、ほかの人が熟練技術を学べるような形で活かしています。

このシステムを開発した背景には、生産拠点となる多くの海外工場で熟練の技術者が不足している問題がありました。同社は海外にも生産拠点をもつグローバル企業ですが、それぞれの拠点で同じ品質を保つための優れた技術者が不足していました。その解決策として、技術のデジタル化という手段による人材育成を行い、生産性の向上につなげています。

同社は、この事例以外にもさまざまなデジタル化の取り組みを行っており、デジタルトランスフォーメーション(DX)に積極的な企業だけが選ばれる「DX銘柄2020」にも名を連ねています。

TOTO:スマートファクトリーの推進

トイレを代表に数々の住宅設備機器を製造するメーカー「TOTO」では、生産設備のほとんどが自動化されています。

同社は滋賀県の工場でスマートファクトリーを推し進めており、IoTを活用して生産ラインを制御・管理しています。たとえば、「品番の異なる製品の混流生産をICタグで管理し、センサーが正確に見分けて作業する」「IoTで製造データを取得して、工程データを可視化し、BIツールで分析して業務改善につなげる」といった取り組みを行っています。

取得したデータとその分析は、歩留まりの安定と向上を目的としており、現に現場のデジタル化と短期的なPDCAを実行した結果、歩留まりの向上を実現しています。この結果を経て、ゆくゆくは国内工場全体にデータ活用の仕組みを広げていきたいとのことです。

山本金属製作所:振動計測による異常検知

金属製品加工や評価試験サービスなどを事業とする「山本金属製作所」では、加工トラブルの対処にモニタリング機器を導入し、加工状態をリアルタイムで可視化することで問題解決を図っています。

同社は、兼ねてから「精密加工部品に切削が難しい材料が増えてきている」「顧客からも加工の形状が複雑なものを要求されるようになった」などの課題を抱えており、要望通りに部品を加工する途中で工具が破損してしまうトラブルが多発していました。工具の破損は生産ロスに直結するため、迅速な解決が求められます。しかし、肝心の加工中の様子がわからないため、原因の特定が困難という状態にあったのです。

そこで同社は自社開発のモニタリング機器を導入し、リアルタイムの加工状態を内蔵の振動センサーで監視することで、適切な状態で切削できるように改善しました。モニタリングにはAI技術も用いられており、工具の寿命や破損を自動検知する役割があります。これにより、工具の保守や精密部品の加工精度向上、作業時間の短縮といった成果を上げています。

まとめ

日本企業におけるAIの導入状況は、世界と比べて全体的に遅れ気味です。しかしそれは、逆にいえば競合優位性を得るチャンスとも捉えられます。

こと製造業において、AI技術は検品や異常検知による不良品の仕分け、従業員の安全確保、在庫管理などの業務に活用されています。大手メーカーでもAIの導入により、コストの削減や製造過程の効率化に成功しているため、計画的にAIを活用すれば高い効果が期待できるでしょう。

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